しょうがいについての考え方


病名や診断名で理解し、説明し、納得しないこと

 

 自閉症、ADHD、アスペルガー症候群、特性などについて基本的な知識を持っていることは必要です。それは、子どもの行動を理解するためです。『訳の分からないことを言う・する子ども』ではないということが分かるためです。決して診断をするためではありません。子どものことを理解し、どのようにかかわればいいかを知るために知識が必要です。

 

診断名で子どもを見ないこと

 「自閉症の○○君」「ダウン症の○○ちゃん」というように、診断名で呼ばれる子どもはいないはずです。○○君はあくまで○○君です。その子がどのような子なのかを理解したいのです。その子の様々な側面の一つに、自閉症という診断を受けた、ということがありますが、その他にもたくさんの特徴を持っているはずです。診断や症状を中心に見るのでは無く、広く全体を把握して下さい。

 

 診断名を中心に人を見ると、その子のどの行動も特性に見えてしまいます。そうしてその子の本当の姿、ありのままの姿を理解することが難しくなってしまいます。診断名などは知っておくべきですが、その診断名で子どもを理解しないこと、診断名で行動を納得しないことです。

 こだわりの全く無い人はいないでしょう。お気に入りの服やバッグがあったり、好き嫌いが激しかったり、朝は必ずパンを食べるとか、飲物はこれに決めているなど、なんらかの特性を持っているはずです。でもそのことによって診断を受けたりすることはありません。人の行動のどこまでが「普通」で、どこからが「しょうがい」なのかは難しいものです。

 

しょうがいとはなにか

 人の身体的特徴や行動がそのまま「しょうがい」となることはありません。目が見えない、左腕が動かないなどの身体的特徴は「障害」として法律で認定されます。知能検査で一定の水準以下も「障害」として認定されます。

 

しょうがいの程度は環境によって異なる

 しかし、実際に何に困っているのか、どのように困っているのかは、「障害」の状態で決まるのではありません。環境との関わりの中で「しょうがい」の程度が決まってきます。たとえば、車いすの人が外出するのに、エレベーターがあるマンションに住んでいる人に取っては「しょうがい」にはなりませんが、階段しか無いマンションに住んでいる人には大きな「しょうがい」があることになります。しょうがいは環境との関わりで把握されるものなので、子どもだけを見てしょうがいを判断してはいけないのです。

 「どんな環境に居る時にどうなるのか」それを徹底的に個別化して把握することによって、その子の「しょうがい」を理解することが出来ます。

 

 また、「しょうがい」の程度は、生活への影響によって測ります。どのような行動であっても生活に悪影響を与えないのであればそれは「しょうがい」として認知されません。生活は『日常生活』と『社会生活』の二つに大別されます。

  日常生活—朝起きて、洗面や着替え、身支度を整える。食事・トイレ・風呂などの基本的な生活のことです。さらに、家族とのコミュニケーションなど限られて人間関係を結び、保つことも含まれます

  社会生活—自分の家というある程度守られた空間から出て、家族以外の人間の中で生活することです。これには様々なレベルがあります。学校のクラス、家の近所などの空間の広がりと、親戚の人、同じクラスの友だち、違う学年、近所の人たち、見知らぬ人が大勢居るお店や電車の中などの人間関係の広がりによって社会の広さが測られます。

(2015/8/31 松山 真)



社会性を育てるということ


「社会性を育てる」ということ

(株)こみふく

代表取締役 松山 真

 登録しているお子さん全員のケースカンファレンスの1回目が終了しましたので、そこで話し合われたことを基に今後の目標を明確にして下さい。関わる人がそのことを意識して関わることが重要です。一人一人のお子さんに意図的な体験をして貰うことで、何を育てるかを文章にして書いておき、それを見ながらプログラムを実施して下さい。

 

 BASE01の目標は社会参加】です。子どもは「身体的」・「心理的」に成長するだけではなく「社会的」にも成長しなければなりません。どんな人もその人なりの社会に参加していくわけですから、一人一人の「社会的成長」を意識し、促すことに力を入れたいと思います。したがって人間の「社会的側面」の把握と、「社会的成長」を促すプログラムや関わりを意識的に開発し、進めて頂きたいと思います。

 

「社会」を広げるとは

 社会の最小単位は家族です。ここを疑似社会として、様々なルールを学び徐々に(より広い)社会で生活が出来るようにしていくことになります。社会を広げるとは、家族を出発点として、人数、空間、関係などが拡大していくことです。

 

「社会の広がり」(社会性)

 家族に始まって社会が拡大し、将来的により大きな社会での生活が可能になるよう練習をしていくことになります。

 社会が広がるとは、次のような要素が拡大していくことだと思います。

1,   空間 (新しい空間、広い空間)

2,   時間 (徐々に長くなる)

3,   人間関係 (人数が増える、関係が深まる、様々な立場の人と関わる)

4,   役割 (暗黙のルール、社会のルールに従ってふさわしい役割を遂行できる)

5,   刺激 (徐々に増える、強くなる、新しい刺激が加わる)

6,   その他 (一人で出来るようになる、助けを求めることができるなど)

 

これらはバラバラではなく、家族という空間と人間関係の中から、保育所という新しい空間に行くことになれば、当然新しい先生との人間関係をつくることになり、保育園生という新しい様々な役割が期待されますし、場所も、人も新しい刺激となってきます。こうして全部が関連し連動しているものです。ですから、目標を一つにすることはありません。むしろ目標は多くなると思います。

 

 ★ 来ている一人一人の子どもの社会性を広げる目標を立てて下さい

この要素の、どの部分をどのように広げていくことをBASE01での目標にするのか、プログラムや活動の目的にするのかを意識して下さい。


 

★用語の説明★

 

「社会的側面」とは

 人間の社会的側面とは、主に「役割」と「人間関係」です。

1,「役割」

 人間は社会(association)で生きているため、人との関わりは不可欠です。役割とは、人間が他者に要求する暗黙のルールに従った役割と、社会が規定したルール(法律など)に従った役割があります。社会で生活人間は、それらの役割を感知して、あるいは知って、そのルールに従い役割を遂行していことが期待されています。それが出来ない「役割不全」「役割阻害」が起きてそれが続くと、社会的不適応状態と判断されることになります。

1)   暗黙のルールとその役割

暗黙のルールは、法律で定められたり、どこかに書いてあるものではないので、それぞれが感知して、そのルールに従うことによって何らかの役割を遂行することが期待されています。しかし発達障害の子には、この暗黙のルールを感知すること、その役割が期待されていることを認知することが苦手な場合が多いと言われています。ですので、このルールや役割を覚えて、ある程度遂行できるようになることが社会性ということです。

  自然法(人間の良心に備わっているとも言われています)としては「暴力はいけない」「殺してはいけない」「悪いことが分かる」などです。

  家族の中では「夫」「妻」「父親」「母親」「祖母」「祖父」という家族関係にしたがった役割があります。これは家族によって異なるルールも多くなりますが、一般的には「子どもを養育する(衣食住を整える、情緒的関わりを持つなど)」などがあります。

  電車に乗っているときには、「乗客」という役割が暗黙に求められています。「運賃を払う」「むやみに騒がない」「他の乗客に迷惑を掛けない(携帯電話で話さない、犬を連れて乗らない、靴で椅子に上がらないなどたくさんあります)」。「バスの乗客」になると電車乗客役割に加えて、「降りるときにボタンを押す」「降りる時以外にボタンを押さない」などもあります。

  学校にいる時には、「先生の言うことをきく」「授業中は座っている」「廊下は走らない」など様々なルールがあります。

  その他、社会生活をしているとこうした暗黙に期待されているルールや役割が膨大にあります。朝起きてから昼間社会参加をして夜寝るまでの時間、その人なりの様々な役割を期待され、遂行しています。まずはそれを想像して明確にすることです。

  どの役割が出来て、どの役割は出来ていないか、それを明らかにしていくことで、社会性をはかることができます。

   

2)   社会が規定しているルール

様々な法律に定められた(刑法や民法など)ものから、会社の規定や市の条例で定められたものまでこれもかなり多くあります。しかし逸脱した場合には、ルールが明確なので役割遂行しているかどうかが、本人も他者にも明確になります。指摘も修正も比較的容易です。場合によっては法律違反となってしまう場合もあるので、そのことを理解できるようになることも必要になります。

  「燃えないゴミは水曜日」、「回覧板を回す」など地域のルール

  「交通違反」「無賃乗車」など交通に関するルール

  「住居侵入」「窃盗」「無銭飲食」など他者の物と自分の物の区別

   

 

 社会性が広がるとは、次の6つの広がり

1,空間

 「空間を広げること」が目標になります。

 自分の部屋、自分の家の中、近所の公園、学校のクラス、行き慣れたお店、そしてBASE01

 落ち着いていられる空間(場所)を徐々に増やして、広げていくことを目標にします。

 

2,時間

 「時間を長くすること」が目標になります。

 「どこかの空間で、何かをしている」。その時間を少しずつ長くしていくことを目指します。

 「集中力」だけではなく「持続力」に関係することです。

 

3,人間関係

 「信頼関係が築けている」「一緒に居ても大丈夫」「一緒に居られる」などの人間関係を築いていくことと、その人数を増やしていったり、関係を深めていったり、年下の子・年上の子・大人・先生など様々な立場の人との人間関係を築いていくことを目指します。

 

4,役割

 前述したような、暗黙のルールや社会が規定しているルールを知り、そこで求められている役割を遂行することができることを目指します。

 

5,刺激

 目に入ってくる物(色や形)、耳に入ってくる音に敏感な子がいます。最初は刺激を少なくして落ち着いて居られるようにしていきますが、徐々に刺激に対する耐性を持っていくことを目指します。何が刺激になるかは一人一人違うのでまずはそれを把握することです。

 

6,その他

 上記以外の要素として考えられるのは「一人でできる」「一人で判断出来る」などの他者との関係がない状態での自立に関することです。「助けを求めることが出来る」「困ったことを言える」など人間関係に近いものもあります。これらも社会生活では大きな目標になります。


(2015/9)

 



BASE01の理念


「事業を開始するにあたって、最初の職員研修の資料」

 

<<BASE 01は、ソーシャルワークを行う事業所です>>

 ソーシャルワークは、人と環境が相互に影響し合う接点に介入し、その人のwell-beingの増進を目指します。』(IFSW:ソーシャルワーク定義2000

 人だけを変えようとするのではなく、環境に働きかけるだけではなく、人と環境の双方に働きかけること、「相互に影響し合う接点に介入」していくことが特徴です。Well-beingは、「望む生き方・望む在り方」と理解します。

 

 人は環境の中で生活しています。そしてその環境は個々に違います。みな同じ家に住んでいるわけはなく、家族構成も性格も行動パターンもそれぞれに特徴があります。従って環境に働きかけると言っても、一人一人異なる人間が異なる環境にいることを理解し、徹底的に個別化をしなくてはなりません。従って、どの子にも同じプログラムを提供することはソーシャルワークではあり得ません。

 

<<出来るだけ個別プログラムを>>

 どの子にも同じプログラムを提供することは、専門家(と呼ばれる人)が効率的に仕事をしたいというエゴでしかありません。人が人と関わる、人が人を育てることに効率を求めてはいけません。どれだけその子に関心を持つか、どれだけ時間を掛けるか、どれだけ手を掛けるかに専門性を見出して下さい。

 機械や道具が発達したことにより、効率化とハイテク化を求める社会になっています。しかし、人間に向き合うハイテク化は、最新の機械や道具ではなく、人間自身が一対一で向き合ってくれることです。機械には絶対に出来ないこと、人間が直接向き合い、互いの存在を感知する事こそがハイテクなのです。

 放課後デイサービスは学校と異なり、少人数・一対一で対応出来る環境なのですから、効率化を求めず、徹底的な個別化を進めて下さい

 

<<目標は社会参加>>

 しょうがいを持つお子さんの両親の最大の関心事・心配は、『自分たちがいる間はいいが、いなくなったらこの子はどうやって生きていくのだろうか』ということです。

 専門家の責任は、その悩みを正面から受けとめ、その道筋を示していくことです。今何が出来るのかは、長いステップの一つに過ぎず、その悩みに直接的に結びついてはいません。

 短期目標(3ヶ月から半年程度)と中期目標(1年から3年)、そして長期目標(3年後、5年後)を立てることです。先まで見通せることが専門家の持つ専門性と言えるでしょう。長期目標をまず立て、そこに到達するまでのプロセスを細かいステップに分け、小さな課題を一つ一つ克服していくことで、成長していること、目標に向かっていることを本人も家族も周囲の関係者も実感出来るようにすることです。「今している課題はどこに向かうためにしているのか」、その目的意識を共有していることで、ご両親にもようやく少しばかりの安心感を得ていただけるのではないでしょうか。

 長期目標を、ご両親と共有することを心がけて下さい。

 

 

2015年5月13日

(株)こみふく      

代表取締役  松山 真


会社及び事業所について


                     <キックオフ・ミーティング資料>

 

株式会社 こみふく/BASE 01 キックオフ・ミーティング

 

日時:201545日(日)14時〜

場所:株式会社こみふく 事務所、事業所BASE 01

 

1, 株式会社設立の経緯と思い

1)    株式会社であることの意味

  資本金を安定させ、長期に安定的に経営していくことができる

  職員も安定して勤めることができ、経験を積みながら育っていくことができる

  安定した経営を持続させることが出来れば、事業の拡大(店舗増、種類増)ができる

  結果として、子どもの成長に合わせて長期的にフォローしていくことができる

2)    今会社を設立し、事業を開始する思い

  <人>これまでCasa de Banbino で培ってきた人材と北里のつながりを活用

  <金>鈴木の遺産の一部を用いた

  <思い>松山・鈴木に連なる子どもへの思い。人を育てる

  Mission>福祉の現状は変えなければならない。子ども・家庭福祉が阻害されている。

 

2,こみふくの目的 

定款第2条(企業理念) 

当会社は、家庭・こども福祉の向上を通してコミュニティにおける社会福祉に貢献する活動を行う。

 

  次世代を担う児童の健全育成、子どもは社会の宝であるという意識を持ち、共に子育てをする社会の実現を目指す。

  単にCasa de Bambinoの学習支援を継続するためでは無い。

  地域(コミュニティ)の児童・家庭福祉の増進に貢献するため。

  発達支援・放課後等デイサービスは、家庭・こども福祉の入り口に過ぎず、今後は事業所や範囲の拡大を考えていく。

 

3, BASE 01

  子どもにはいいものを提供する。本物を提供する。

  専門家による、専門的プログラムを提供する

  子育ての主役はお母さんであるという意識。両親とともに育つ環境を考える。

  子どもは家庭・社会のもの、どのような形であれ、社会に出て行けるようにすること。

 

4, 今後の予定

  <短期>

  5月に事業開始。そのための事務手続き、環境整備、受け入れ体制を整えていく

  市内にある児童関係機関、施設をできる限り見学しておく(マッピングと俯瞰)

  8月から収入確保。1年間で収支を整える

    <中期>

  3年後には2カ所目を開所。6年目に3カ所目を開所

      <長期>

  2カ所目、3カ所目を担う人材をBASE 01で育成していく

  ニーズに合わせて事業を拡大する。(ニーズがあれば他の事業も検討する)

 

5, 職員の雇用体制について

  社員として雇用する。社会保険には加入。

  社会保険労務士等の助言を受けながら、法遵守し雇用する。


6, 発達支援・障害児放課後等デイサービス事業について

  法・規則に則り公正に運営し、費用請求することが求められます。

  BACE 01』運営にあたって、様々な手続きが必要となるため、4月中に手続き、書類関係を把握して下さい。

  事業が始まるとプログラムをこなすことに注力しがちになるため、出来れば今のうちに市内の児童関係の機関・施設を把握しておいていただきたい。

 

以上(松山 真)